【3DCG初心者向け】レイトレースとパストレースの違いを徹底解説!ソフト別の得意不得意も比較

3DCGをはじめてしばらくすると、必ず耳にするのが「レイトレース(レイトレーシング)」と「パストレース(パストレーシング)」という言葉です。

「なんとなくキレイなレンダリングのことだろう…」とふんわり理解している人も多いですが、実はこの2つを正しく理解しているかどうかで、ソフト選びやレンダリング設定の判断力が大きく変わります!

この記事では、現役のCGデザイナー目線で「レイトレースとパストレースの違い」を初心者向けにわかりやすく解説します。さらに、Blender・Maya・Cinema 4Dなど主要ソフトのレンダラーが、それぞれどっちの方式を使っていて、どんな絵作りが得意なのかも比較していきます。

目次

そもそも「レンダリング」とは?まずは全体像から

レイトレース/パストレースの話に入る前に、まず「レンダリング」という言葉を整理しておきましょう。

3DCGで絵が出てくるまでの流れ

3DCG制作は、ざっくり以下の流れで進みます。

  • モデリング(形を作る)
  • マテリアル/テクスチャ(質感をつける)
  • ライティング(光を置く)
  • レンダリング(最終的な絵として出力する)

このうち最後の「3D空間の情報を2Dの絵として書き出す処理」がレンダリングです。

レンダリング方式は大きく分けて2種類

レンダリングの方式は、おおまかに分けると2系統あります。

  • ラスタライズ法:ポリゴンをピクセルに変換して描画する方式。高速だが、光の物理的な振る舞いは再現しないため簡易的。リアルタイム向け(ゲームエンジンやBlenderのEevee など)。
  • 光線追跡法(レイトレース/パストレース):光の挙動を物理的にシミュレートする方式。リアルだが計算コストが高い。

つまり「レイトレース」と「パストレース」は、どちらも光線追跡法の仲間です。ここからが本題です。


レイトレース(レイトレーシング)とは?

仕組みを一言でいうと「光を逆向きに追いかける」

現実世界では、太陽や電球から出た光が物体に反射して、最終的に私たちの目に届きます。これをそのままシミュレートすると、ほとんどの光は目に入らず無駄になってしまうため、3DCGでは逆方向に計算します。

つまり、カメラ(視点)から1ピクセルごとに「光線(レイ)」を飛ばし、物体に当たったら反射・屈折を計算し、最終的にどの光源にたどりつくかを調べる、という処理を行います。

用語メモ:「レイ(Ray)」=光線のこと。「トレース(Trace)」=追跡する、の意味。直訳すると「光線追跡」です。

レイトレースが得意なこと

レイトレースは、特に以下の表現が得意です。

  • 鏡面反射(金属、鏡、ガラスへの映り込み)
  • 屈折(ガラスや水の中での光の曲がり)
  • くっきりした影

レイトレースの限界

ただし、シンプルなレイトレースだけでは「間接光」をうまく表現できません。

たとえば、赤い壁の近くに白い箱を置いたとき、現実世界では壁の赤い色が箱にうっすら反射します(カラーブリーディング)。これは光が壁から箱へ何度も跳ね返って起きる現象ですが、シンプルなレイトレースだけでは追いきれないのです。

そこで登場するのが、次のパストレースです!


パストレース(パストレーシング)とは?

レイトレースとの決定的な違いは「光が何度も跳ね返ること」

パストレースは、レイトレースをさらに発展させたバージョンだと考えてください。

レイトレースが「光源にたどり着くまでを1本追う」のに対し、パストレースは「光が空間内であちこちに跳ね返って、混ざり合う様子まで再現する」のが特徴です。

パストレースが得意なこと

  • グローバルイルミネーション(GI、間接光)の再現
  • カラーブリーディング(色の写り込み)
  • ソフトシャドウ(自然で柔らかい影)
  • フォトリアルな質感

「写真と見間違える絵」を狙うなら、現状ほぼ一択がこのパストレース系のレンダラーです。

なぜ重い?なぜノイズが出るの?

パストレースが「重い」「時間がかかる」と言われる理由は、光の経路をランダムにたくさんサンプリングして平均を取るという仕組みにあります(この計算方法をモンテカルロ法と呼びます)。

サンプル数が少ないと「ザラザラしたノイズ」が出て、サンプル数を増やすほどキレイになりますが、その分時間もかかる、というトレードオフです。

用語メモ:「サンプリング」=1ピクセルあたり何本の光線を飛ばすか。Blender Cycles の「Samples」設定はまさにこれです。


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【比較】レイトレースとパストレースの違いまとめ

ここで、両者の違いを表で整理します。

項目レイトレースパストレース
仕組みカメラから光を1本追う光を何度も跳ね返らせて平均化
反射・屈折◎ 得意◎ さらに正確
間接光(GI)△ 苦手◎ 非常に得意
ノイズ出にくい出やすい(要サンプル数)
レンダリング時間比較的早い重い
主な用途リアルタイム、ゲーム映画、CM、静止画フォトリアル

ざっくり言うと、「軽く綺麗ならレイトレース、究極のリアルならパストレース」という覚え方でOKです。

3DCGソフト別|レンダラーの得意・不得意まとめ

ここからは、初心者がもっとも気になる「結局どのソフト/レンダラーを使えばいいの?」を整理します。

Blender Cycles(パストレース)/ Eevee(ラスタライズ)

Blenderには標準で2種類のレンダラーが入っています。

  • Cycles:パストレース方式。フォトリアルな静止画やムービーに最適。
  • Eevee:ラスタライズ+スクリーンスペース反射などの組み合わせ。リアルタイムに近い速さで動作。

初心者がよく混乱するポイントですが、「アニメ調・短編動画・とにかく早く確認したい」→ Eevee、「フォトリアル一枚絵・本番レンダリング」→ Cycles という使い分けが基本です。

Arnold(Maya/3ds Max 標準)

Autodesk製のレンダラーで、Maya・3ds Maxの標準レンダラーとして採用されています。

CPUベースのパストレーサーで、映画・アニメVFXのスタジオで圧倒的な実績があります。設定がシンプルで、結果が安定しているのが強み。GPU版もありますが、Redshiftほどの爆速感はありません。「フォトリアル+プロダクション安定性」を求めるなら最有力候補です。

Unreal Engine(Lumen / Path Tracer)

ゲームエンジンですが、近年は映像制作でも急速に導入が進んでいます。標準の「Lumen」はリアルタイム向けの簡易GI、「Path Tracer」モードに切り替えると本格的なパストレース出力も可能です。リアルタイム制作・バーチャルプロダクションを視野に入れるなら必須のツールです。

Unity HDRP / URP

Unity も Unreal Engine と同じくゲームエンジンですが、近年は 3DCG 映像、VR コンテンツ、バーチャルプロダクションといった分野でも採用が広がっています。Unity には複数のレンダーパイプライン(描画処理の仕組み)が用意されており、特に重要なのが URPHDRP の 2 種類です。

URP(Universal Render Pipeline)

「軽さ」と「汎用性」を重視したパイプライン。スマホゲーム、VRChat などの VR コンテンツ、WebGL 書き出しまで幅広いプラットフォームに対応します。基本はラスタライズ方式で、リアルタイム性が最優先。標準ではレイトレーシングに対応していないため、フォトリアル表現よりも 「軽快さ × マルチ環境対応」 を取りにいくパイプラインです。

HDRP(High Definition Render Pipeline)

高品質ビジュアル特化のパイプライン。PC やハイエンドコンソール向けで、リアルタイムレイトレーシング(DXR / DirectX 12 ベース)に加え、Path Tracer モード(オフラインのパストレース出力)にも対応しています。映像作品、建築ビジュアライゼーション、バーチャルプロダクション現場での採用が増加中。動作には DirectX 12 対応の RTX 系 GPU などが推奨されます。

初心者の選び方:スマホゲームや VRChat 向けのアバター・ワールド制作なら URP、PC 向け高品質ビジュアルやリアルタイム映像なら HDRP という使い分けが基本です。なお Unity は今後 URP と HDRP を統合する「Unified Renderer」の方向性も発表しているため、最新動向もチェックしておくと安心です。

Redshift(Cinema 4D/Maya/Houdini など)

GPUベースのパストレーサーで、Maxon(Cinema 4Dの開発元)が提供。速さと品質のバランスが非常に良く、CM・MV・モーショングラフィックスのスタジオで人気です。

「キレイで、しかも早い」というのが最大の魅力で、Cinema 4Dユーザーの間では事実上のデファクトスタンダードになりつつあります。

Octane Render

OTOY製のGPUパストレーサーで、爆速かつ綺麗なことで知られています。Cinema 4DやBlenderユーザーに根強い人気があり、フリーランスのデザイナーやMV制作で採用例が多い印象です。デメリットはレンダーファームの選択肢が少ないこと。

V-Ray

Chaos Group製の老舗レンダラー。建築パース・プロダクトビジュアライゼーションの世界では事実上の標準と言える存在です。3ds Max/SketchUp/Maya/Cinema 4D、そして最近は Blender にも対応。マテリアルライブラリが豊富で、リアルな建築・インテリア表現に強いです。


【用途別】おすすめレンダラー早見表

用途おすすめレンダラー
学習・趣味でフォトリアルに挑戦したいBlender Cycles
アニメ調・短編・とにかく早く出したいBlender Eevee
映画・VFX系の現場を目指したいMAYA Arnold
CM・MV・モーショングラフィックスRedshift / Octane
建築パース・プロダクトV-Ray
リアルタイム/ゲーム制作Unreal Engine
スマホ/VR/マルチ環境のゲーム制作Unity URP
PC 向けリアルタイム高品質映像Unity HDRP

初心者はどっちを使えばいい?目的別の選び方

最後に、3DCGをはじめたばかりの方に向けて、現役クリエイター目線の指針をまとめます。

  • まずは Blender + Cycles から始めるのが最強。無料で、業界標準級のパストレーサーが付いてくる、という他にはない環境です。
  • アニメ調・短納期の制作は Eevee で十分。むしろリアルタイムにプレビューしながら詰められるメリットが大きいです。
  • 商用案件を意識する段階になったら、Arnold・Redshift・V-Rayなど業界標準のレンダラーに触れていくのがおすすめです。
  • 「レイトレースとパストレースのどちらが優れているか」ではなく、作りたい絵に合わせて選ぶものと割り切りましょう。

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まとめ|違いを理解すれば「絵作り」の幅が一気に広がる

最後に、本記事のポイントをまとめます。

  • レイトレースは「光を逆方向に1本ずつ追う」シンプルな光線追跡。反射・屈折が得意。
  • パストレースはレイトレースの拡張版。光が何度も跳ね返る様子まで計算するため、間接光やフォトリアルな絵作りに圧倒的に強い。
  • ただしパストレースは計算コストが高く、ノイズ対策(サンプル数)も必要。
  • ソフトごとに採用しているレンダラーが異なる。Blender Cycles・Arnold・Redshift・Octane・V-Ray・Unreal Engine など、用途で使い分ける時代。
  • 初心者はまず Blender の Cycles と Eevee の違いを体感することから始めるのがおすすめ。

レンダリング方式の理解は、3DCG初心者から一歩抜け出すための重要なステップです。次は実際に Blender で同じシーンを Eevee と Cycles でレンダリングして、絵の違いをご自身の目で確かめてみてください。それが一番、理解が進みます。

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